第十二篇 聖者の帰還
著者:shauna
ゴンドラに揺られながら、シンクラヴィアが案内した先はサーラにとってものすごく見覚えのある場所だった。
「ここって・・・」
「そう・・・魔道学会フェナルト支部・・・」
ゴンドラを接岸し、岸に降りた2人がゆっくりとそちらへと近づいた。
と・・・
「よう・・・遅かったな・・サーラちゃん。」
魔道学会の入口の街頭の下でにこやかにこちらに手を振る人物がいる。それはまぎれもなく・・・・
「あれ?ジルさん?」
さっきおいてきたはずのジルだった。
「スカルヘッドを倒すために残ったんじゃ・・・?」
「まあ、相手にもならないってことさ・・・雑魚ばっかだったしな・・・」
その言葉には過剰で無い自信が込められていた。
流石聖蒼貴族・・・その名は半端ではないってことか・・・
そして、そこに丁度ファルカスも見慣れないオレンジ色の髪の男と合流した。
「よう、ルシファード。ずいぶん遅かったな・・・」
「そっちと違ってこっちは厄介なのが一匹いてな・・・。」
「ほぅ? お前が苦戦するなんて・・・雪でも降るんじゃないか?」
「んなわけあるか・・・久々の殺しだったからついつい楽しみ過ぎただけだ。」
「やっぱりな。そんなことだろうと思ったぜ。作戦を無視してばっかいると姫に怒られるぜ?」
「そうなれば願ったり叶ったりだ。俺が聖蒼貴族に居る目的には御嬢と戦うことも入ってるからな。幻影の白孔雀の魂の潰える音を聞けると思うだけで涎がでてくる。」
「ったく・・吸血鬼はこれだから・・・やっぱ、ガルスの軍人は品位に欠けるか・・・」
「黙れゴミ。それとも俺とヤるのが嫌で、子犬みたいに震えてるだけか? 心配しなくていいぞ。女ったらしのアホ騎士の魂の潰える音なんざ、黒板を爪でひっかく音に等しいだろうから聞きたかねぇよ・・・」
「ハッ!!できるもんならやってみろ!!!」
2人はそれぞれの武器を取り出・・・
「2人ともやめて!!!」
サーラの声が響き渡った。
「シルフィリアさんが時間稼いでる間に私達でアリエスさん助けなきゃならないんだから、もっとテキパキ行動しないと!!!」
「・・・」
「流ッ石サーラちゃん。俺が見込んだだけのことはあるな・・・」
その言葉にファルカスは呆れたようにジルを見つめた。
「おい、ルシファード・・・こいつ一体、なんなんだ?」
「バカだ。」
うわぁ・・・これ以上ないってぐらいハッキリ宣言しやがったよこいつ。
入口と建物周辺の警備をルシファードとジルに任せ、進入路の確保をシンクラヴィアが担当して、ファルカスとサーラは建物の中へと侵入した。道はまるで迷路みたいで、途中、かなりの数の下級魔族(エビルデーモン)やスカルヘッドに遭遇したが、ここまで力を抑えてきただけのことはある。
一気に解放した力でファルカスがデーモンを倒していき、その後ろをサーラが付いていく形。
そして、2人が階段の中腹に存在する広い踊り場に出た頃・・・
一人の男がそこに佇んでいた。
いや、男というにはその姿は大いにかけ離れていた。
全身が骨で山羊の頭蓋骨に6本の腕を持つ、明らかに異質な存在。
おそらく魔界の住人。魔族の中でもとりわけ高いクラスの・・・
「よくぞ、ここまでたどり着いたねぇ・・・いや、気を悪くしないでくれ。こんな言い方をすると誤解を招きそうだけど、正直、街のどこかで下級共にやられて粉砕しているとばかり思ってたのでね。」
山羊頭の悪魔は表情こそ骨で読み取れないが、穏やかな口調で話す。
「さて・・・僕はこう見えても平和主義なんだ。できればこのまま引き下がってくれると嬉しいんだけどね・・・」
「そうはいくか!!?」
ファルカスが声高に叫んだ。
「こっちにだって目的がある!!!この先に居るアリエスさんを返してくれるなら話を聞かないこともないがな!!」
「ああ・・・彼ね。彼ならもうここには居ないよ。」
「何!!?」
その言葉にファルカスが動きを失う。
「君達がくるってわかったからさ。クロノがどっかに連れてった。」
「クロノ・・・あの男か!?」
ファルカスがオボロと初めて会った時の男のことを思い出す。
「そう・・・今頃は大聖堂だよ。」
「クッ!!!」
「さあ・・・はやくひきかえしたほうが・・・」
「ウソだね・・・」
後ろで黙って聞いていたサーラが静かに答える。
「なんだって?」
山羊頭の悪魔は首をかしげる。
それに対し、サーラは何時にも増して毅然とした態度で言い放った。
「だから、嘘だよ。アリエスさんはここにいるし、それにあなたは平和主義なんかじゃない。本当は私たちが道を戻ろうとした途端に私たち2人を殺すつもり・・・背後からの一撃で・・・」
「・・・」
悪魔が静かに無表情になっていく。いや、骨だからもちろん雰囲気での話だけど・・・
「サーラ・・・今の言葉・・・」
「あの人の心がそう言ってる。他の人は騙せても・・・私は騙せない。」
ファルカスの発言にハッキリと言い放ち、サーラは静かにメルディンを構えた。
「なるほどな・・・」
それに続くようにファルカスも自らの腰からシラヌイを抜く。
それを見て悪魔は・・・
「フハハハハハハッ!!!!」
高笑いをキメ込んだ。
「なるほど・・・嘘はつけないか・・・いや、正直甘く見ていたよ。けど・・・」
悪魔は静かにすべての手を広げる。するとその手の先全てが光りだし・・・すべての手に武器を出現させた。一番上の手に2本の長刀。真ん中の手に2本の魔法杖。一番下の手に攻撃用の光の玉。
「そう言えば、まだ名前を言ってなかったね。僕はカレヴァラ。北の叙事詩より出し、破滅の魔王。召喚されちゃったから、君たちを殺すことにするよ。恨みはないけど・・・死んでくれる?」
その言葉と共に発せられる禍々しい殺気。
シルフィリアのそれまでとはいかないまでも、他を抑えつけるのには十分すぎる圧力(プレッシャー)
そして、2人が僅かに怯んだ瞬間・・・
カレヴァラが一気に襲いかかる。上手2本による剣戟。それをファルカスは止めるも・・・
「グッ!!」
相手は悪魔、しかも剣は2本。腕を伸縮させるという人間ではありえない攻撃にファルカスの肩に剣が突き刺さる。
それを見逃さすにカレヴァラはさらに4撃をファルカスの体に与える。
致死量とまではいかないまでも、両腕と両足から鮮血が吹き出した。
「ファル!!」
「大丈夫だ!!」
全然大丈夫じゃなさそうなのに無理をするファルカス。
「待ってて!!今治療するから!!」
「おっと・・・そうはいきませんよ。」
中手の杖が光り、
『氷の矢(アイス・アロー)』
数十本の矢がサーラめがけて発射された。
「くっ!!『聖なる護り(スフィア・プロテクション)』」
命中する寸前で自身の体の周りに防護膜を張り、なんとか防御するサーラ。
しかし・・・
「やはり甘いね・・・」
カレヴァラは静かに追撃を繰り出していた。狙っていたのはそう・・・手負いのファルカス。
「―!!―『聖なる護り(スフィア・プロテクション)!!』」
すぐに魔術を発動し、ファルカスの防御に回るサーラ。しかし・・・
自身の体を護っていた時のタイムラグとそして、気がつかなかった不意打ちにその発動が僅かに遅れる。
その結果・・・
「グァアアア!!!!」
ファルカスが聞いた事もない程のとてつもない悲鳴を上げた。
僅かに遅れた防御呪文。刹那の時間差で間に合わなかった一本の氷の矢がファルカスの右肩を直撃したのだ。
やられた・・・。
これは氷の矢の魔法・・・氷が解ければ血が噴き出す。だだでさえ、致命傷だといのに・・・
まずい・・・まずい・・・まずい・・・まずい!!!
「なんとかして、治癒魔術を!!!」
そうは思うものの、カレヴァラの攻撃が強すぎて正直、防御がやっとの状態。
その間にもジワジワと床に広がっていくファルカスの血溜まり。
どうする!!どうする!!!!どうする!!!!!!!!
頭をフル回転させて現段階の対処法を考える。
まず、どうにかして隙を作らなきゃ・・・
その為に相手の心を読むが・・・
!!!!!!!
「――うぅ!!!」
とてつもない頭痛にサーラが頭を抱えた。
ダメだ・・・禍々しすぎて、下手をしたらこちらの精神が浸食されてしまう。
その様子を見て、カレヴァラが笑う。
「まったく・・・中途半端な力ほど、無様なモノはないね。そうは思わないかい? 読心術者のお嬢ちゃん。」
悔しい・・・残念だが、今の状態では確かにカレヴァラの言うことの方が正しい。
「・・・・・・サーラ・・・・・・・・・」
「ファル!!?」
瀕死状態のファルカスが消え入りそうな言葉で言う。
「・・・・・・逃げろ・・・・・・サーラ・・・・逃げ・・・て・・・・・・」
「ファル!!!喋っちゃダメ!!!!」
「念のため言っておくけど、誰も助けには来ないよ。君達がここに入ってきた時、ここへの入り口を閉ざした。今ここは外部とは完全に隔絶された場所。」
カレヴァラの言葉が深く突き刺さった。
どうする。自分はまだやれる。だけど、現状で打つ手はない。ファルカスの怪我ももう・・・どうする・・・どうすれば!!!
「僕も召喚された身だからさ・・・主の命令は聞かなければいかない。君達は今後きっと名のある魔道士と剣士になるだろう。だからとっても惜しい。けど、君たちを殺せというのが主の命令だ。悪いけど・・・退場してもらおう・・・」
カレヴァラは言い終わると同時に静かにサーラにむかって下手の光球を構える。
「あれは・・・マズイ!!!」
あの光球。おそらくは魔族の”暗黒球(ダークボール)”!! 魔族の持つ強大な魔力をそのまま野球ボール大に集約し、そのまま相手に投げつける魔法。
その攻撃力は当然、その魔族の階級に比例するわけだが、さっきカレヴァラは自分のことを北の叙事詩に登場する魔王と言っていた。
つまり、その攻撃力は少なくとも自分を粉々に吹き飛ばすのにも自分とファルカスに張ったシールドを打ち破るのにも十分なはず。
やばい!!マズイ!!!
手に出現させた光球をカレヴァラは勢いよく投げ・・・
―ガキンッ!!!!!―
剣同士がぶつかる音が響いた。
「ファル!!!」
サーラが叫ぶ。
瀕死状態のファルカスが気力だけで起き上がり、シラヌイで斬りつけたのだ。
「そんな事・・・俺がさせるかよ・・・」
血をボタボタ垂らしながらファルカスがカレヴァラを止めた。
「サーラは・・・サーラだけは・・・絶対に殺させない!!!」
一度剣を離した後、出来る限りの強い一撃を打ち込み、再び鍔迫り合いに持ち込み・・・
「俺が・・・相手だ!!!」
ものすごく睨みを聞かせた眼でカレヴァラを睨みつけた。
「・・・やれやれ・・・自ら残りの命の時間を縮めるとは・・・」
火花を散らして剣を再び離し、ファルカスはシラヌイを両手で持ち、思いきり振る。
途端にガキッともバキッとも取れる轟音が響いた。
カレヴァラの持っていた剣が宙を舞う。
「なんと・・・魔界の鉄で造られしこの剣を折るとはね・・・素晴らしい腕前と剣・・・これはおもしろいな。」
その発言にもファルカスは一切コメントをせず、力強くもう一度剣を振るう。
その速さはかなりのものだったが、しかし、怪我をしている為単調とならざるを得ないファルカスの攻撃が魔王に通用するはずもなく・・・
ヒラリと身をかわした
直後、下左手に持った光球をファルカスの体めがけてぶつける。
―!!!!!!!―
声を上げることも出来ず、地面に倒れこんだファルカス。
まるで人形の如く地面に全身を打ちつけ・・・
そのままピクリとも動かなくなる。サーラに向けて目を見開いたまま・・・それはまるで・・・
「ファル・・・」
震える声でサーラが尋ねた。
「ウソ・・・だよね・・・ファル・・・そんなはずないよね・・・」
頭の中に浮かぶ最悪のシナリオを消し去る為、サーラは必死に問いかけた。
「ファル!!目を開けてよ!!!ねぇ!!!ファル!!!ファル!!!!!!!!」
しかし、ファルカスは動かない。まさか・・・そんな・・・まさか!!!!
「残念だよ。彼はきっと誰もが認める程の戦士となれただろう。だが・・・これも道理。運が無かったね。彼も・・・」
そんな・・・そんな・・・
「ファル・・・ウソ・・・だよね・・・」
「他人の事情に首を突っ込むからいけないのさ・・・」
「ファル・・・あの時私言ったよね・・・他人に迷惑かけなきゃいいって・・・」
「”剣聖”を救おうとしなければ、こんなことにならなかったのに・・・」
「ファルが死んだら・・・私すごい迷惑だよ?・・・それにファルが死んだら・・・誰がブラッドさんの意思を継ぐの?」
「自業自得とは言わないけどさ・・・それでも、やっぱり最後に決めたのは自分だよ。その業は自分で償わなきゃならない。だよね。剣士君。」
「いや・・・嫌だよ!!!!目を開けて!!!そんなのやだよ!!!こんな旅の終わり!!!絶対にヤダ!!!ファル!!!ファル!!!!!!!!」
必死の呼びかけにもファルカスが動くことは無かった。
サーラの中で何かが砕け散る。
―私のせいだ・・・―
どこからともなく声が聞こえた気がした。
―私の・・・私が殺したんだ・・・―
「違う!!!」
その声を消し去るようにサーラが叫ぶ。
―違わない。もし自分がシルフィリアに協力するなんて言わなければどうなった?そもそもシルフィリアのスペリオル目当てに欲を抱かなければどうなった? ファルカスは死んだ?―
「そんな!!!そんなこと!!!」
―あるよ。自分が殺したんだ・・・自分が・・・―
「そんな・・・私が・・・」
いやだ・・・そんな・・・私が・・・ファルカスを・・・私が・・・嫌だ・・・こんなに苦しいのなんて・・・だったらいっそ・・・
―Pureral(体内和浄)―
サーラの頭の中に静かに呪文が紡がれた。
途端に気分が晴れていく。真っ暗だった視界が緩やかに晴れていき、今の状況が明確に示し出された。
悔しそうな顔をするカレヴァラ・・・
まさか!!!
――Wenn herr Falcus wurde besiegt, karevala plazierte Sie unter Magie . Es ist “Dipression”. Weil Sie Magie begannen, benutzte ich “Pureral”.
(ファルカスさんが倒れた時、敵があなたに魔術を行使しました。“心閉術(ディプレッション)”です。あなたが魔術にかかったようなので“体内和浄(ピュアラル)”を自動使用しました。)―
魔法の言語で紡がれる文字がサーラの脳内に描き出される。
誰!!?誰がこんな!!
―Es ist in Ordnung. Herr Falcus Leben.(心配要りません。ファルカスさんは生きてます。)―
「え・・・」
その言葉にサーラは僅かな希望を見出した。
―Aber drehe ich mich, seien Sie in einem gefahrlichen Staat, und es gibt nicht es. Aber ich kann hinuber bekommen. beginnen Sie mich bitte sobald moglich.(しかし、危険な状態なのは変わりありません。ですが、私の魔力を使えば治せます。さあ、一刻も早く私を起動してください。)―
でも一体誰の声? この場に居るのは倒れたファルカス以外は敵であるカレヴァラと自分だけ・・・
「あなた一体誰なの?」
―Es gibt mich in der Nahe von Ihnen(私はあなたのすぐ傍に居ます。)―
え?
その言葉にサーラは慌てて周りを見回す。そして・・・手に持ったメルディンの魔法石に光で信じられない文字が刻まれていた。
「― Intelligent Mode ―」
「まさか・・・あなたなのメルディン。」
―korrekte Antwort.Ich bin mit Meistern starker.Weil es gemacht wurde, es sicherer zu machen. OK, bitte setzen Sie es fruh(その通りです。私は主がより強く、より安全に戦えるように制作されましたから。さあ、早く設定をして下さい。)―
「でも、どうやって・・・」
―Es braucht keine Sorge. Bitte machen Sie es, wie ich sage.(心配要りません。私の言う通りにして下さい。)―
サーラが静かに立ち上がった。
「何だい?諦めたのかい?」
カレヴァラが静かに問いかける。
『我・・・望む者なり・・・』
その口から発せられた言葉にカレヴァラが首を傾げる。
『契約の元、その力を解き放て・・・』
「なんだい? もしかして壊れちゃった? 」
『風は空に、星は天に・・・我が名サーラ・クリスメントの元にこの手に魔法を。』
「もういいや・・・才能ある魔術師を殺すのは忍びないけど・・・君にも退場してもらおう。」
緩やかにカレヴァラが腕を上げる。
―Es ist das Letzte darin.Ich setze mich vollstandig in Verbindung mein und Ihr Wille.Bitte setzen ein Paswort.(これで最後です。私とあなたの意志を完全に接続します。パスワードを設定してください。)―
『パスワードは・・・『ファルカス・ラック・アトール』!!』
最後の言葉を紡いだ瞬間・・・メルディンの魔法石が輝き始める。
CPC Rahmenvollendung.
Ein Machtanzeiger normaler Wert.
Ein automatischer Lernensystem Notizanfang.
Automatisch magisch verbrauchen Sie Funktionssystem.
Schaltungsverbindung.
Alles Systeme-Rudergrun
読み取れない程の速さでメルディンが文字を再生する。
―Werfen Sie bitte auf.Und ich habe hochst Prioritat, und befurwortet die Beschworung, die ich spiele, bitte.(構えてください。そして、私の再生する呪文を最優先で行使してください。)―
サーラが静かにうなずく。
―OK Gehen wir( OK 行きましょう。)―
「もうそろそろいいかな? 」
カレヴァラが静かに下右腕を構え、残った光球をサーラ目掛けてぶつける。
迫りくる暗黒球。
それに対して、サーラは頭の中に浮かんだ信じられない呪文を口にした。
「絶対守護領域(ミラージェ・ディスターヴァ)!!」
自分を包み込む蒼いオーロラ・・・
暗黒球はそれに触れると同時に爆発し、まるで溶けるように消滅した。
「すごい・・・本当に出来た!!」
―Aber gibt es eine Verwendungsgrenze, weil dies die Magie ist, die ein Produzent einem Stock uberlies.Ich bin mehr nicht verwendbar.(しかし、これは製作者が杖に残した魔術なので使用制限があります。もう使えません。)―
「大丈夫。残りの魔力量はどのぐらい?」
―Ich benutzte eine magische Macht von 30%, die fur einen Stock von der gegenwartigen Magie gehabt wurde.Es ist Rest 70%. Ich benutze 40%, um zu verhandeln Ein un das(今の魔術で杖のコンデンサに蓄えられていた30%の魔力を使用しました。残り70%です。内、ファルカスさんを治療する為に40%を使用します。)―
「了解。防御は任せる。後、呪文を教えて。」
―Roger.Der Meister(了解です。我が主)―
サーラは早速頭の中に浮かんだ魔法を詠唱する。
『我との契約の元に具現(あらわ)れよ聖なる王。』
「ふっ・・・今度は何をするつもりかな?」
カレヴァラはそう呟き、手に持った杖から数十本の氷の矢を飛ばす。
―runder Schild(円形防御壁)―
杖が自動的に魔術を行使した。サーラの目の前に魔法陣が展開し、すべての矢を叩き落とす。
「なっ!!呪文詠唱中に高位防御魔法だと!!?」
カレヴァラが驚く中、サーラはさらに魔術を続ける。
『汝が統べるその大いなる力を我に与え、我望む全ての者を救え。』
焦ったカレヴァラは再び氷の矢を大量に飛ばしてくるが、すべての矢を先程と同じ魔法で防御するメルディン。
「馬鹿な・・・」
カレヴァラが信じられないといった声を漏らした。そして・・・サーラの呪文も完成する。
『神の息吹よ、癒しの恵みを運べ。『女神の息吹(ブレス・オブ・ゴッデス)!!』』
杖が一気に輝き、溢れた光がファルカスを包み込む。
優しく・・・幻想的に・・・
静かに浮き上がったファルカスの体は急速に傷口を癒していく。
それこそ本当に“神の祝福(ラズラ・ヒール)”すら凌駕するスピードで・・・
ものの数十秒で輝きは消え、そして・・・
「う・・・ぁ・・・」
ファルカスが静かに目を開けた。
「ファル!!!」
サーラが喜びの声を上げる。
しかし、これを容認できないのはカレヴァラだ。
「ふざけるな!!こんなこと!!!ありえない!!!」
先程までの様子とは打って変わって、焦った表情をする。
「確かに殺したはずだ!!なのに!!!なんで!!!」
「サーラ・・・俺一体・・・」
「大丈夫。大丈夫だから・・・」
回復したとはいえ、まだその余波でボーっとしているファルカスを床に寝かせ、サーラは静かにメルディンに問いかける。
「ねえ、あいつ一撃でやっつけられる魔術。シルフィリアさん保存してたりするかな?」
―ja.Ich bewahre es.(はい。保存しています。)―
「それ使ってあいつ倒すよ。残りの魔力全部使って構わないから。」
―Rojer(ハイ。)―
「くっ!!」
カレヴァラが杖を捨てる。
それに対し、サーラは静かに頭の中に浮かんだ“魔法の言語(マジック・ワード)”を口にした。
『来たれ、白き暴風。空を埋め尽くす矢羽となれ。』
一方、カレヴァラも本気になる。6本すべての腕に出現させるのはあの光球。
それも大きさはバレーボール大。
相手も最後の攻撃というわけだ。
2人が互いに向けて魔術を放ったのはほぼ同時だった。
カレヴァラはすべての手の光球をサーラ目掛けて投げつける。
時を同じくして、サーラも最後となる魔法を放った。
『白き死の大地(ビェラーヤ・オブ・アルビオン)!!!』
勝負は一瞬で決した。
サーラの放った10本の装飾矢はカレヴァラの光球と接触し、6本を相殺させたものの、残り4本がカレヴァラの頭と胸と腹と片足を打ち抜いていた。
緩やかにカレヴァラの姿が薄くなっていく。
「やれやれ・・・負けたよ。いやぁ・・それにしても強いね・・お嬢ちゃん。」
「ごめんなさい・・・でも、魔族の人相手だと手加減は・・・」
体に刺さった魔法の矢を見つめながら申し訳なさそうなサーラ。
「ハハハ・・・まあ、魔族相手ならこれぐらいOKでしょ。君ほどの歳で魔王を魔界に送り返すとは・・・完敗だよ。」
「・・・」
「消える前に一つだけ聞いておきたい・・・。」
「なんですか?」
「君・・・名前は?」
「サーラ・クリスメント・・・あっちはファルカス・ラック・アトール」
「そうか・・・覚えておくよ。いい魔法使いと剣士になりなよ。それじゃ。」
そう言ってカレヴァラは姿を消した。
終わったと思った途端にドッと疲れが来る。
ダメだ・・・杖のおかげで魔力は残ってるけど、体力が付いていかない。
ファルカスも急激な傷の回復でまだボーっとしてるし・・・
ボロボロになりながらも2人はそれぞれ剣と魔法杖を杖代わりにしながら地下最下層の扉を開ける。
途端に嫌な臭いが鼻を突き、2人が顔をゆがめた。
死体が腐った臭い・・・
そんな臭いの中、2人は口元を腕とハンカチで塞ぎながら散乱する白骨の中を歩き回る。そこはそれほど広い空間ではないものの、柱に繋がれた死体ならゴロゴロしていた。
しかし、そんな中で・・・
「サーラ!!見つけた!!」
響いたファルカスの声にサーラも慌てて声のした方向へと向かった。
ファルカスと合流し、彼の指さす方向を見つめる。
そこには・・・
ボロボロの白ワイシャツと黒スラックス身を包んだ一人の少年が鎖に繋がれ静かに頭を垂れていた。
2人は慌てて駆け寄り、ファルカスが繋がっていた手の鎖を切ると同時にサーラが緩やかにその体に触れて、外傷や精神状態を確かめる。
「・・・・・・」
その感触で静かに少年が目を覚ました。
「・・・貴殿らは・・・」
弱々しい声にサーラの檄が飛んだ。
「喋っちゃダメ!!アリエス=ド=フィンハオランさんだよね?」
少年が静かに頷く。
「サーラ?どうだ?」
心配そうにかつ焦ったように呟くファルカス。
「ヤバいかも・・・衰弱も酷いし、拷問されたんだと思う。外傷もかなり酷い。正直、意識を保ってられるのが奇跡ってぐらい・・・」
サーラも上面では冷静を装うが、内心焦りまくっていた。正直、あと少し発見が遅れていれば命の危険性はさらに高まっていたはずだ。
静かに回復系の呪文を唱えながら、サーラは静かに事情を説明する。
「私たちはシルフィリアさんに言われてあなたを助けに来たの。いい?絶対に助けてあげる。だから・・・死んじゃダメだよ!!?わかった!!?」
アリエスは静かに頷いた。
その体を安定領域最低限まで回復させて、サーラの指示のもと、ファルカスがアリエスを背負う。
「後は予定通り、脱出だな。」
ファルカスの確認にサーラも無言で同意した。
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